海のクローバー

読書感想文や、咲-Saki-を中心に「ものを読んで思うこと」少しずつ綴りたいと思います。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。11巻感想

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』 
今一度原作をきちんと読み直そう企画。

今回は11巻を改めて読んだ感想を。

発売直後に買ってはいたものの、仕事が忙しく
なかなか筆を執る時間が作れませんでした。
アニメは3期はないんだろうなぁ・・・OVA的なの出たらほしいなぁ。。。

さてさて、今巻もすばらな内容ばかりなので、
個人的に気になる「10のキーフレーズ」でまとめていきます。


<以下、ネタバレです>













◆概要◆

季節はバレンタイン。
受験を控える来年は楽しめない高校最後のバレンタン。

今回の依頼人はまたも三浦・・・と川なんとかさん。
内容的には、手作りチョコを作りたいと。
「葉山に自然にチョコを渡す」を実現するためにお料理教室を開催する。
(今回はほぼ依頼は重要じゃなかった・・・)

後半は由比ヶ浜の計画で、奉仕部3人での水族園デート。
由比ヶ浜の提唱で、3人の関係性をや雪ノ下の抱える問題を
見つめ直すか、見て見ぬふりをしていくかを問い直すことに。



◆雑感◆

チョコ作り教室は、キャスト勢揃い的な感じで、ラスト感を感じました。

今回は依頼はほぼ重要性がなく、八幡らしい解決も、それを要求する障害も
ほとんどない、スムーズな依頼の遂行でした。
「エクスキューズを与えればいい」を導いて終了なのはちょっと寂しかったかも。

今回も陽乃さんが、八幡たちの3人の関係性、雪ノ下の問題点を問うてくる。
合同クリスマス企画を機に作り直したはずの欺瞞的な関係が
望んだ「本物」とはやはり違うのだと。

「自分らしさ」を一つの焦点に、奉仕部3人の関係を問い直す、
そのための助走みたいな内容でした。

このもやもや感を残すラストの感じ、俺ガイルらしさでしょうか。
アニメ最終回も「本当に最終回?」な終わりでしたね。

内容の核心的なところ、「雪ノ下の抱える問題」や「由比ヶ浜の目指したもの」
などは正直よくわからない部分も多く、想像が捗るところですが、
今巻のキーワードもほとんど後半の水族園パートになっちゃいそうです。


さてさて、この11巻を「キーフレーズ」で振り返り。



【1】「受け取らざるを得ない、というか受け取るのが自然な状況なら話は別だろ」/比企谷八幡

バレンタインにチョコを受け取らない葉山に、三浦や一色がチョコを渡すにはどうすべきか。
今回の依頼のミソはここだった。

人気もであるが故に貰うと揉めるから受け取らないとはカッコいいものだ。
ならば貰うための言い訳、エクスキューズがあればいい。

今回の依頼はこれで解決。ちょっと簡単すぎて拍子抜けまである。


【2】「陽乃。もし君に、・・・本当に積もる話があるなら、いつでも付き合ってやる」/平塚静

陽乃さんのお酒の誘いに対する平塚先生の返し。
そしてその言葉の後のごくわずかな沈黙と機微。

まるで底なし沼のように本心を見せない陽乃さんに対して
平塚先生にはわかっていることがあるようだ。

かねてから、陽乃さんこそ「自分がない」のではと考えていたが、
もしかしたらやはりそうなのかなぁって。

積もる話をするほど何かを持っていなくて、周りと上手く合わせ、操り、
自分に対する誰かがあって初めて成立しているような・・・
もちろん、妹である雪ノ下に対して抱いている確かなものはあるのだけれど。

次巻で雪ノ下の心理に踏み込んでいく過程で、陽乃さんの「自分らしさ」にも
スポットがあたるのではないか・・・と少し期待しています。


【3】「歩いている最中は進んだ距離を振り返らないものさ。もっとも、歩みを止めてしまったものからすると、進んだ距離の分だけ裏切られたようにも感じるものだが」/平塚静

今回のイベントを俯瞰しながら、八幡の成長(変化)を評価する平塚先生。
八幡も自身の変化に対する「違和感」は感じていて、それを大切にしろと。

その成長・変化をここで止めずに歩んでほしい。
それを既に諦めてしまった人のようになるんじゃないぞ、そんな風に感じました。

前に進んでいる(=成長している)時は後ろを振り返る余裕もない。
ただひたすらに歩みを進めるだけ。
振り返るということは、その足を止めているのだ。

少し会わないうちに友達がすごく成長していたり、
以前は同じくらいの実力だったのに、久々に会ったらすごく差がついていた
そんな経験は誰しもあるのだろう。
それを裏切られたとは思わないだろうけど、その感情は似ているかもしれない。

そんなこと言いたかったと思う。
諦めて足を止め、人の成長を嫉妬しているのは、陽乃さんのことを指しているのかな。


【4】「でも、今の比企谷くんたちは、なんかつまんない。
    私は・・・、前の雪乃ちゃんの方が好きだな」/雪ノ下陽乃


奉仕部3人の仲良い風景に、今回も水を差してくる陽乃さん。
君の願った本物の関係はこんなものなのかと問うてくる。

心のどこかで成長の違和感を感じながら、目を逸らしてきた。
だからこそ突かれるとはっとし、答えに詰まる。

陽乃さんが八幡や雪乃に何を望んでいるか、いまいち要領を得ない。
ただ、10巻ラストの手記にあったように、今はもう本物なんて信じていない。
自分より劣ると思っている妹が、自分の諦めてしまったところに到達するのは
受け入れられない、みたいな感情も混じっているのかなぁ。

自分を超えることができず、たたただ追従し模倣してきた雪ノ下の方が
ある意味素直で、確かな存在で。
今のように寄る辺を見失いぬるま湯につかることをよしとする姿は見るに堪えない。
んー・・・自分の掌で転がっている方がいいという意味だろうか・・・よくわかんない。。。


【5】「もしもし。今はお互い冷静じゃないだろうし、一晩考えて改めて話に行くわ。一応連絡だけ・・・」/雪ノ下雪乃

学校帰り迎えに来た陽乃さんを拒み、由比ヶ浜の家に泊めてもらうことに。
外泊を姉に一応連絡する雪ノ下。

八幡に言われたのと全く同じことを陽乃さんに電話で告げる。
「自分のなさ」をとても端的に表現した一幕でした。

こんなに醜悪な雪ノ下をみるのは初めてではないだろうか。

八幡が見て来た雪ノ下雪乃は、常に美しく嘘を付かず誠実で、
寄る辺が無くてもその足で立ち続ける・・・のはずだった。

正直、こんなにも弱い雪ノ下はあまり見たくないなぁ。
「自分のなさ」は10巻あたりでもでてきていたが、こんなはっきりと・・・。

由比ヶ浜もそれを核心したからこそ(ここ最近の態度軟化も含めてだけど)、
3人デートと最後のあの提案を決意したんだろう。

加えて、生徒会選挙の時に八幡が小町から目的を得て動いたことと
をなぞるように書かれていると思う。

その時はそれが正解と思ったが、後に自分自身で目的を
見いだせなかったことへの誤りに気づき、一つ階段を登ったように、
次には雪ノ下が自ら動く、という構図なのだろう。


【6】「寄る辺がなければ、自分の居場所も見つけられない・・・。
    隠れて流され、何かについていって・・・見えない壁にぶつかるの」/雪ノ下雪乃


由比ヶ浜の計らいで少しだけ2人の時間になった八幡と雪ノ下。
群れることなく泳ぐ一匹の魚を自分自身に重ねて呟く雪ノ下。

昨晩の電話の件を自覚しているかはわからないが、陽乃さんにも正面から言われるなど、
「自分のなさ」を雪ノ下も理解している。
そしてそれに改めて絶望している。

やはり雪ノ下の問題の核心はこれなのだろう。

次巻で雪ノ下がどんな依頼を持ち出すかはわからないが、
自分の意思で自分の行動を本当の意味で自ら決めていく、
それを自ら始める、そのためにどんな依頼を・・・?


【7】「・・・だから、ただのお礼」/由比ヶ浜結衣

ここからが11巻の本番。
以降のやりとり全部まとめて一つでいいんだけど、まぁ形上分けときます。

八幡が加わって初めての依頼、それは由比ヶ浜
「手作りクッキーを食べてほしい人がいるけど、自信がないから手伝って」。

あの依頼は結局、「今度は自分でやってみる」で終息していた。
一応八幡にクッキーはあげていたが。

あれだけ壊滅的な腕前の料理(クッキー作り)をできるようになった前進と、
あの時「ちゃんとあげる」ことができなかったが、今はあげられる、
この2つの前進、とくに後者を示したんだと思う。

そう思うと、やられた・・・と感じますね。
完全に終わった話と思っていけど、伏線だったんですね。

本当は由比ヶ浜は好意を併せて渡したいと思っているけど、
それを胸にしまい、「ただのお礼」として手渡す。
踏み出す、それを示すために。
そして、雪ノ下が渡すとしても「好意」でなく渡して、
どちらかを選ぶのではなく奉仕部3人のこの関係の継続を願ったのかなぁと。


【8】「あたしは全部ほしい。今も、これからも。
    あたし、ずるいんだ。卑怯な子なんだ」
   「あたしが勝ったら全部もらう。ずるいかもしんないけど・・・。
    それしか思いつかないんだ・・・。ずっと、このままでいたいなぁって思うの」
由比ヶ浜結衣


八幡もモノローグで述べるように、一連のやりとりに明確な主語が存在しない。
だからそれぞれの捉える意味が同じとは限らないし、
むしろ違って捉えているとさえ思えてならない。

特にこのセリフは捉えが広く、判別しかねる。疑問は主に2点。
由比ヶ浜のほしい「全部」とは何か?
②何を以って由比ヶ浜は「卑怯」なのか?


由比ヶ浜のほしい「全部」とは何か?

(A)八幡との恋人関係と、雪ノ下との友人関係
(B)八幡との恋人関係と、奉仕部3人の仲良し関係
(C)雪ノ下との友人関係と、奉仕部3人の仲良し関係

候補はこんなところかと。
奉仕部3人の仲良し関係は、雪ノ下との友人関係も包含する気はするが・・・。

個人的には(C)のように読みました。
もちろん八幡への好意はあるものの、身を引く意思があると思う。
むしろ2人の仲を応援しようとさえしている気もする。

由比ヶ浜は生徒会選挙の時も言っていたように、
「この奉仕部が好き」なのだ。
八幡を好きと思う以上に、この奉仕部、3人でいる「今この瞬間」が好きだから。


②何を以って由比ヶ浜は「卑怯」なのか

ずるい、卑怯なのは、雪ノ下の気持ちを知っていながら、
自分の一番ほしいものを望んでやまないから、ではないかと思います。
そして、この方法が決して正しくないとわかっているけど、
他の方法を思いつけないから、こんな形で提案したこと、と思います。

雪ノ下は八幡に好意を抱き、それを踏み出せずにいる。
それが報われる結果になれば、今の奉仕部のような関係は成り立たないかもしれない。
それでも、自分の居場所であるこの奉仕部、3人でいる今この瞬間を守りたいから。

加えて、一色や八幡から言われた「由比ヶ浜らしさ」。
八幡が思うほど自分は優しくない、ずるい子だと。
もしかすると、由比ヶ浜は八幡さえ認識しきれていない
八幡の雪ノ下への好意に気付いてるのではないだろうかとさえ、思う。


【9】「ゆきのんの今抱えてる問題、あたし、答えわかってるの」/由比ヶ浜結衣

雪ノ下の抱える問題とは何か?

最初に読んだ時は「自分がないこと」だろうと思っていました。
八幡を模倣した電話の件もあり、由比ヶ浜もこのことには認識があるはず。

今私が読んで思うには、由比ヶ浜の思う、雪ノ下の抱えている問題は
「自分がない」故に、「今の停滞を打破できない」こと
・・・ではないかと。

八幡への好意があるが、そこに踏み込んでしまえば失うかもしれないものがある。
それは単純に、好きだと告げて失敗したらどうしようという恐怖や、
上手くいこうがいくまいが八幡・由比ヶ浜との関係が崩れることへの憂いだけではなく、
自分の意思でこの件についてどうすればいいかを決めることができないこと。

好きだと告げることに対する心配や周りとの関係への危惧は誰しも持つもの。
雪ノ下の場合は、その判断を決断の仕方がわからないのではないか。

由比ヶ浜ぽく簡単に言えば、八幡への気持ちを行動に移せないこと。


その答えとは何か?

それはおそらく次巻で示される答えと同じなのだろう。
たぶんそれが私たちの答えだと由比ヶ浜が言うこころは、
「雪ノ下が自ら決めた答え」なのかなぁと思います。

どんな結論を出すかは別にしても、そうなんだろうと思う。
そしてその答えを導くための必要十分条件が、
ありきたりな言葉で言えば、「信頼」とかになっちゃうのかもしれないが。
そして、自分の意思で、自分の言葉で、自分の足で進める自信をもつことかもしれない。

由比ヶ浜は、八幡への好意は素直に言えなかったが、
奉仕部、3人でいることを素直に求め続けた。

八幡は、欺瞞な馴れ合いの関係ではなく、本物が欲しいと
それが何かわからなくとも涙を流して素直に求めた。

では、雪ノ下は。

由比ヶ浜は、どんな答えが返ってくるかはわからないけれど、
それが雪ノ下が出した答えなら、それを受け入れる覚悟を持ったのだと思う。


【10】「その提案には乗れない。雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」/比企谷八幡

由比ヶ浜の提案に、力なく従おうとする雪ノ下を制した八幡のセリフ。

【9】の最後で書いたことの論拠はここにみました。
自分の未来や意思を誰かに委ねるのではなく、もがき、苦しみ、あがいて、悩んで・・・。
まさにそうでなくては本物ではないから。

そして、八幡の否定は由比ヶ浜の提案そのものではなく、その形への否定。
正しくないと分かっているのにそんな方法を取らせることはできないから。

ただ、ここで思うのは、八幡と由比ヶ浜の見ている「雪ノ下の抱える問題とその答え」の違い。

由比ヶ浜→問題:自分がない故、今の停滞を打破できない
       答え:雪ノ下が自分で答えを出せば、それが答え

八幡→問題:自分がないこと
     答え:その理由を克服し、「自分」を得ること

くらいの差があるのかなぁと。突き詰めれば同じだけどさ。

こうして折れかけた雪ノ下は息を吹き返し、
自らの悩みを依頼という形で2人に告げる・・・。
3人の関係がまた一歩、「本物」に近づいた。






11巻もアニメ「続」も、ここで終わりですか!?なEND。
修学旅行編の時のようなモヤモヤ感が残ります、いい意味で。

依頼の遂行があっさりすぎて、少し寂しいとは思うけど、
最後の水族園パートは息の詰まる展開でした。

この感、たくさんの感想・レビューサイトを拝見しました。
人によって捉え方が随分と違い、おもしろかったです。
(正直、共感できた感想に引っ張られた部分も否定できないが)

由比ヶ浜の提案の本当に意味することろは、正直よくわかりません。
次巻で何が語られるのか、楽しみに待つよりありませんね。

いよいよ次が最終巻という噂も耳にしますが、果たして・・・。
ともかく、遂に「雪ノ下の心理」に踏み込む回がやってくるでしょうから、
個人的には陽乃さんの本当の姿みたいのが見えてくることに期待。

最初の依頼である、手作りクッキーがここに繋がる伏線だったというのは、
正直してやられたなぁ・・・です。
残っている伏線みたいのは何があるか・・・。

終わって欲しくはない気持ちがあるけど、早く続きも読みたい。
次もすばらなお話を期待して・・・。



【気になったことメモメモ】

★川なんとかさんの得意料理は「里芋の煮っ転がし」・・・地味だ

★「味見して感想をくれればいいのよ」の再登場

★小町汁はさすがにキモイといわれるな

★折本を意識する玉縄くんがおもしろすぎる

★八幡はルームフレグランスを知らない