海のクローバー

読書感想文や、咲-Saki-を中心に「ものを読んで思うこと」少しずつ綴りたいと思います。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。5巻感想

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』 
今一度原作をきちんと読み直そう企画。

5巻を改めて読んだ感想を。

今巻もすばらな内容ばかりなので、
個人的に気になる「10のキーフレーズ」でまとめてみます!



<以下、ネタバレです>
















◆概要◆

4巻のキャンプから数日、八幡は図らずもぼっちな夏休みを過ごせなかった。

家族旅行に行く間、由比ヶ浜から愛犬サブレを預かることに。
小町の計略により、そのお礼ということで由比ヶ浜と花火デートをすることに。

そんな花火会場で陽乃さんと遭遇。
入学式の日の事故の加害者が雪ノ下家の車だと明言される。

今まで誰も問わず、答えずにきたあの日の事故のこと。
そして雪ノ下のことをどれだけ知っていたのだろうか、改めて考える八幡。

―その人を「知る」とはどういことなのか
奉仕部3人の関係を見つめ直すきっかけとなるお話。





◆雑感◆

由比ヶ浜との花火デート、そこで遭遇した陽乃さんとのやりとり
その中で「雪ノ下雪乃」を考える、というのがテーマだったかと。

花火の炎色反応を引き合いにだし、それぞれの見方や関わり方で
その人の印象や知れる人物像が違うといこと。

全体的に「わかる」「知る」ことへの言及が多い
多くの人が雪ノ下を評した。見る人によって違う、関わる人によって違う、炎色反応のように。

入学式のあの事故のことを黙っていた雪ノ下に対する
八幡の心境の変化も非常に大きいですね。

雪ノ下は最終章でほんの少ししか出てはきませんが
頭の中にはずーっと雪ノ下のことがあった、そんな巻だったように思います。




さてさて、この5巻を「キーフレーズ」で振り返り。


【1】「いったい何をもって、「知る」と呼ぶべきなのか」/比企谷八幡

家族旅行に行く間、愛犬サブレを預かってくれとやってきた由比ヶ浜
雪ノ下に預かってもらえば?という会話の中で、雪ノ下についてあまり知らないと悟る場面。

表面的なことは知っているが、その程度で人を知った気になってはいけない。
周りが自分を理解していないのと同様に、自分も周りを理解していないのだと。

この5巻のテーマを示す一節ですね。



【2】「向こうが悪くないってわかっていても、仲よくできない相手っているでしょ」/川﨑沙希

予備校の授業で鉢合わせた八幡と川なんとかさん。
弟:大志が高校のことを知りたいので教えてほしいというので会いに行くことに。
(注:八幡が行く理由は、大志が小町と一緒にいるから)

雪ノ下にお礼を言っておいてと頼まれるが、自分で言えよという八幡に対して発した一言。

雪ノ下も川﨑も形は違えで孤高の存在、いわばぼっち。
お互い上手くやるためには、「仲良く」だけが正解じゃない。

適度な距離を保つこと、不干渉であることもまた正解なのだろう。
後に八幡と相模はこの関係を構築するに至るし。



【3】「君は存外潔癖だな」/平塚静

いとこの結婚式を抜け出した平塚先生とラーメン屋に行くことになった八幡。
行列に並んでいる間でのフレーズです。

平塚先生は八幡のことを「八幡を中心に見た道理では潔癖」と評した。
自分の中できちんと判断の基準を持っている、それをちゃんと見てくれています。

この5巻最後のシーンで雪ノ下や自分を嫌いだと思う八幡の価値基準は、
ここで平塚先生がいう「潔癖」ってことなんだろうな、と後々思えました。

さらに言えば、ラーメンを食べている最中に平塚先生はこうも付け足します。
「いつか許せるときがくると思うぞ」、と。
それが次の6巻なのですね。



【4】「残される側だって、寂しいって感じると思う」/比企谷小町

サブレのお散歩に一緒に出掛けた八幡と小町。
そのお散歩での兄弟のほっこりする会話のシーンより。

会話自体は八幡が大学に入ったら一人暮らしをするか、という内容。
親のすねをこの先何十年もかじりたい八幡が実家を出るイメージはないですね。

会話の中でふいに雪ノ下も一人暮らしだし、寂しくないのかなぁと。
小町は、雪ノ下でさえ一抹の寂しさを感じて生きていると思うのだと。

確かに去る側の寂しさと残される側の寂しさは比較できないのだろう。

でもこの発言は、入学式の日の事故のことを「知らされないでいた側」と
「伝えないでいた側」どちらも等しく苦しいのだと、そう読めた。

誰しも一つの事案の片側しかわからない。
こちらではわからないもう一方のことは、なかなか考え難いものなのだろうと。

にしても、ここの挿絵は温かくていい絵だなぁ。。。



【5】「・・・雪乃ちゃんは、また選ばれないんだね」/雪ノ下陽乃

花火デートで陽乃さんに遭遇した八幡と由比ヶ浜
見晴らしのよいVIPスペースに招き入れもらい、一緒に花火鑑賞。

この記事を書いている(最新=10巻)時点でも未だ答えの出ていないセリフ。

どちらをとるか、という選択の際に雪ノ下雪乃は選ばれてこなかった。

①どんな選択での、誰と雪ノ下の比較なのか
②雪ノ下を選ばなかったのは誰なのか
③選ばれなかった理由は何か

色々な考察記事を拝見しますが、色々意見が分かれているようですね。

(A)葉山の恋愛絡みで、陽乃さんと雪ノ下の2択
→子供の頃の話としてあり得る
→葉山は陽乃さんに好意?憧れ?はありそう
→現状を見れば雪ノ下は葉山に好意なさそう

(B)母親が、父の後継的ポジションを陽乃さんに
→ここでの会話の流れから推測しうる
→姉を追いかける雪ノ下のコンプレックスとして十分な理由
→長女だし後継指名としては妥当

例えばこんなのとか。

おおよそ、ずっと陽乃さんという完璧な姉の影に隠れてしまい、
あらゆる機会で、学校でも家でも、「選ばれなかった」ということかと。
あるいは運命からすらも。

んー、妄想が捗りますが、答えは11巻あたりで出るでしょうか??



【6】「ずーっとわたしのあとを追いかけてくる妹のことが可愛くないわけないよ」/雪ノ下陽乃

「雪ノ下のことは嫌いなのか?」と由比ヶ浜に問われた陽乃さん。
まるで用意されていたかのうような素早い返し。

6巻や10巻で強調される雪ノ下姉妹の越えられない壁をはっきりと示したセリフ。
自分に常に負け続けるからこそ常に追いかけ続ける哀れな妹。

この言葉を聞くに、きっと陽乃さんは雪ノ下が嫌いなのだろう。
むしろ妬みや嫉妬に近い感情なんじゃないかなぁ。



【7】「そんなに探しても見えるところに傷なんて残ってないよ」/雪ノ下陽乃

花火大会の帰り、ハイヤーで送ろうかという提案に戸惑う八幡への陽乃さんの一言。
ついに入学式の日のあの事故に雪ノ下が関わっていることが明示された。

八幡視点ではそうだろうと推察はできていたが、由比ヶ浜はかなり驚いたのでは?

この爆弾発言をきっかけに、八幡と雪ノ下の関係はぎきしゃくするし、
その後それを乗り越え、関係を構築するに至れた。
良くも悪くも「ターニングポイント」なのでしょう。

口を滑らせたあとの申し訳なさそうな様子に嘘はないようですが、
陽乃さんの性分を考えると、意図があるようにも思えてしまうが…



【8】「でもあたしはもっと知りたい、な・・・。お互いよく知って、もっと仲良くなりたい。困ってたら力になりたい」/由比ヶ浜結衣

花火デートの帰り、由比ヶ浜を家まで送る八幡。
雪ノ下から入学式の日の事故のことを聞いていたか、の話をする一幕より。

二人とも事故のことも、雪ノ下の家のことも知らない。
「言えないこと」はままあるもの。
でも「知らないことが悪いこと」ではないのだと。

確かに本人が触れてほしくないことは触れないでいるべき、というのも至極当然。
でも、もっと知りたいというのもまた然り。

由比ヶ浜は八幡と雪ノ下にとって、本当に必要な存在なのだなぁと改めて思う。

―「知ること」・「思っていることを伝えること」
2人に欠けているこの大事なピースを埋めてくれる。

次の6巻では、困っている雪ノ下を助けることになる2人。
そして、知る・わかるというのは、知りたいと思って踏み込むこととニアイコール。

この会話の最後の方、由比ヶ浜が言いかけた言葉は何なのか?
やっぱり告白しちゃうような流れでしたが。

八幡も由比ヶ浜の気持ちに気付いてないわけではないですから、
あの時本当に告白されてたらどうしたんでしょうね?
資格がないだのなんだ理由付けて断るのでしょうが…



【9】「そんな雪ノ下雪乃に。きっと俺は、憧れていたのだ」/比企谷八幡

改めて雪ノ下雪乃について思う八幡。

結局八幡は彼女のことを何も見てこなかった。
とはいえ、奉仕部に入って以降、雪ノ下へ特別な感情を抱いていたことに気付く。

―憧れ

孤高を嘆かず、自分の正義を貫く強さと美しさ
その完璧な様は、八幡が目指してきたが、いまだ到達できない領域
雪ノ下雪乃はそれを確かに持っている。

確かに2人は立ち位置が似ているし、脆弱さはあるものの、
その完璧さは八幡のそれを完全に凌いでいる。

きっと八幡が雪ノ下にそう思うのと同じように、
雪ノ下も陽乃さんにそう思っているのでしょう。



【10】「雪ノ下雪乃ですら嘘をつく。そんなことは当たり前なのに、そのことを許容できない自分が、俺は嫌いだ」比企谷八幡

憧れたからこそ、求めていた解と違ったと思った衝撃は深い。
いつしか勝手に憧れ、理想を押してけていた自分への自己嫌悪。

ここでいう雪ノ下の「嘘」は、もちろん事故のこと言わなかったこと。
むしろ、「八幡のことを知らなかった」といったことである。

この夏休み、よくよく考えてみればずっと雪ノ下のことが頭にあったように思います。
2学期が始まった日のギクシャクした感じ。もどかしい。

次の6巻で雪ノ下は、らしさを貫き、この嘘を嘘でなくしますが、
それにしてもこの巻の終わらせ方はすごいですね。
挿絵もすばら!




◆その他、わかったこと&思ったこと◆

(1)サイゼリア発祥の地は本八幡。はちまんと読みたくなる(笑)

(2)個性個性という奴らほど個性がない

(3)戸塚のミニ四駆は「アバンテ」

(4)平塚先生のメールが酷すぎる

(5)相模の登場シーンがやけに印象的


全体的に「わかる」「知る」ことへの言及が多かったですね。

そして多くの人が雪ノ下を評した。
見る人によって違う、関わる人によって違う、炎色反応のように。

八幡が雪ノ下に抱いた感情が憧れでよかった。
憧れは恋愛感情にも近しいものがありますが、そこはちゃんと線を引けている様子。

そして相変わらずよく八幡をみてくれている平塚先生、いいですね。

今回のベスト挿絵はやはり最後のページでしょうね。


これを書いている今日は、最新10.5巻の発売日!
しかし私は北海道在住のため、読めるのは明後日です(涙)

とってもすばらなお話でした。