海のクローバー

読書感想文や、咲-Saki-を中心に「ものを読んで思うこと」少しずつ綴りたいと思います。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6.5巻感想

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』 
今一度原作をきちんと読み直そう企画。

今回は6.5巻を改めて読んだ感想を。

今巻もすばらな内容ばかりなので、
個人的に気になる「10のキーフレーズ」でまとめていきます。

整数でないので一応本筋ではないのかもしれませんが、
本編でしょ、これって感じの内容です。
ボリュームもすごいことになってます。


<以下、ネタバレです>










◆概要◆

文化祭が終わり、次の大きな学校行事は体育祭。

そんな中、平塚先生の提案で始まった新たな活動「千葉県横断お悩みメール」で

①三浦から「相模が落ち込んでクラスの空気が悪いから、なんとかならないか?」

②生徒会長の城廻めぐりから「体育祭を盛り上げるために協力してほしい」

という依頼が舞い込む。

手伝うことになった体育祭は意外と厄介な状況に。

未定だった委員長には、文化祭の汚名返上のために相模南を担ぎ上げることになる。

八幡たちは上手く相模を盛り立てながら切り盛りしていくが、
首脳部と現場班の対立が激化し、直前まで作業が進まない状況が続いてしまう・・・。


ボーナストラックでは、奉仕部+その仲間たちのクリスマスパーティー
みんなでプレゼント交換会です。


◆雑感◆

「やはり相模は相模でした」という表現がしっくりくるかな。
基本的には相模はあまり成長していなくて、八幡とは違った形でダメなやつ。

でも、逃げてもいい状況であえて逃げなかったり、
最後の三浦や八幡への対応など、少しは進歩の片鱗を垣間見ることができたかも。

立場・状況が変わると掌を返したように非難し対立する相模の友だち、
器でないと分かっていて据えられて委員長を務める状況・・・

ちょっと相模が可愛そうな状況ではあるけど、相模だし同情できないのがすごい。

八幡的には、他人を理解することの難しさ・ヒントを間接的に得た巻だったような。

特に「相模の行動を全く読めなかった」ことが大きなポイント。
理性の化け物が感情を考慮できていなかった、これを八幡はどれだけ意識できたのかな。

由比ヶ浜はモテるし、三浦は器がでかい、めぐり先輩は優しい。

クリスマスパーティー編では、ちょっとした進展が見えましたね。
素直になった感のある八幡の成長がちらほら。


さてさて、この6.5巻を「キーフレーズ」で振り返り。


【1】「気にらないと思われたら、いくらこっちの言ってることが正しくても感情で批判され続けるってことだよ」/比企谷八幡

相模の友達モブキャラら現場班が相模委員長に対する反発心を顕にし、
体育祭実行委員会の議論が進まなくなってしまう。

今後の運営について首脳部での議論にて八幡のセリフ。

相模が委員長を続ける以上、現場班の反発は変わらない、
失った信頼を取り戻すのはそう簡単じゃない。

八幡のこのセリフはおおよそ真理である。
理詰めのやり方では、理論的に考えない感情論な相手には通用しない。

八幡自身がそう確かに認識しているけど、彼にはその相手側の感情論的思考が読めないのである。


【2】「・・・やります」/相模南

そんな首脳部でのやり取りの中で、相模は委員長を辞める選択肢があった。
雪ノ下は、「無理に続けなくてもいい」「お願いしたのはこちらだし責任はとる」と。

相模に自信を取り戻させクラスの雰囲気を改善するという依頼のため、
雪ノ下は相模に「責任転嫁の逃げ」を許さないためにあえて慰留をしなかった。
そしてあえてきつい言葉を投げかけ奮起を促す。

部の悪い賭けですね、自分ならこの状況で辞めるよなぁ…と思ってしまいます。

けれど相模は委員長を続ける、と。

相模自身の心情はここではほとんど描かれないので、よくわかりませんが、
相模のプライドなのでしょうかね。


【3】「一度こじれたら、もう元には戻らない」/比企谷八幡

この体育祭のストーリーには直接関係する言葉ではないけど、
今後の展開を思うと考えるところがあるセリフかなと。

体育祭の実行委員会にしろ、クラスの雰囲気にしろ、人間関係の絡む中では、
一時度こじれたものを修復するのは非常に難しいこと。

自分で発した言葉が喉に詰まったような違和感として、今後の八幡に降りかかってくるんですね。

これ以外にも7・8巻以降に訪れる奉仕部の危機がそれとなく暗示されている箇所もちらほら。


【4】「実際に目にしてみて、改めて実感する。やはり、違うのだ」/比企谷八幡

体育祭の準備作業中、イベントにかこつけて
由比ヶ浜と仲良くしようとする男子にちょっと嫉妬する八幡。

顔も可愛いし、明るく人当たりもいい、男子に人気。
そんな由比ヶ浜を見て、自分と由比ヶ浜との住む世界(=カースト)の違いを痛感する。

面倒くさいやつだな、八幡…。ただ、ここが八幡の人間性の重要な部分。
八幡の「カースト意識」が強すぎることはこれまで何度も描写されている。

八幡の孤独体質の改善には、必ずこのカースト意識の改善が必要そうです。
「やはり、違うのだ」はどうやら特典巻から追加されたようですが、
八幡のカースト意識をより強調したようですね。

でもまぁ、身近な人をみて「住む世界が違うな」と思うことは時々あることだけどね。


【5】「だからさ、相模さんはよくやってくれてると思うんだ。ここまで頑張ったんだし、もうちょっとやってみない?」/城廻めぐり

現場班の反発により再び停滞した実行委員会。
相模は自分が辞めるしかないか…と考える局面が再びやってきた。

誰も積極的に相模を引き留めない中、めぐり先輩だけは相模を評価し、引き留めた。

なんかもう、めぐり先輩がいい人で、生徒会役員がおろおろ泣くのも少しわかる。

正直、描写を見る限り、相模の頑張りを評価できる材料はとても少ない。
それでも辞めて逃げていい局面で自らの意思で続投し、
多くの現場班が見守る中、遥・ゆっこに頭を下げた。

上手く進んではいないけど、相模なりに頑張ってはきたのだろうな、と。
それを手際のよくない自分を引き合いに出しながら
評価してあげられるめぐり先輩はすばらだと思いました。


【6】「体育祭への参加自体を自己責任での参加とします」/相模南

この巻のハイライトでしょう、現場班を「相互破壊確証」的な手段で黙らせる場面。

部活の大会前にケガが不安で危ない競技(※安全対策は十分)はやりたくない、
と直前で競技自体を否定する現場班に対して、

体育祭自体を人質にとるかのように
「自己責任参加。文句ある奴は見学もその他競技の参加も禁止」にすると打ち出す。

そりゃ平塚先生、焦りますわな。普通、有り得ないし…。
理屈的にはちょっと飛躍もあるしね。

八幡らしい解決策といえばそうなんでしょうけど、やり方として賛同しにくいですかね。
スピーチのさせ方(間の取り方とか)まで仕込むあたり、八幡すごいなぁ。

この巻前半で八幡が小町に勉強を教えるシーン。
米ソ冷戦構造の説明で出てきた「相互破壊確証」がここに絡んでくるんですね。
やはり何気ないやりとりが後の展開にきちんと絡んでくる、わたりんナイスです。


【7】「今度はちゃんとやろうって頑張ってるじゃない!なんでわかってくれないの?謝ったし、反省だってしてたのに…」/相模南

ここもこの巻のハイライトでしょう。相模が首脳部(主に八幡)に対して激高する場面。

体育祭の自己参加を提案してから現場班もいっそう反発し相模VS遥・ゆっこの口論に。
相模は自分の扱いと評価に対する不満をぶつけ、言葉も喋れないほどに泣く展開に。
八幡が想定したシナリオとは異なる形でこの場はうやむやに終わってしまう。

確かに相模はめぐり先輩以外にはあまり評価されず、自己参加案の件についても
八幡らに言われるままに委員長として発表の役を務めただけ。
自己承認欲の強いとされる相模でなくても、もっと認めてほしい、評価してほしいとは思うのだろう。

さて、相模の心情はまぁそれとして、最大のポイントは
八幡が感情の問題に弱く、相模の感情的行動を全く読めていなかったことかなと。

八幡自身もこんなシンプルなことに俺は気付かなかったのか、と感じています。

後に「理性の化け物」と言われたり、「感情は理解していない」など
こと「感情」への理解・配慮のなさを指摘される八幡のそれがよく出ているシーンに思えます。


【8】「ねぇ、そこ、どいてくんない」/相模南

体育祭のあと、廊下ですれ違う八幡と相模。
別に何でもないこの一幕が小さな成長の証なのだろうなと。

体育祭のお手伝いに三浦が来た時にお礼を言ったシーンも同様。

この巻の主題はやはり相模のちょっとだけの進歩。
文化祭以来、八幡を含め遥・ゆっこ、三浦などとのかかわり方が少し変わった。

別に仲良くなったわけでも、より敵対するでもなく。
「無関係」とでもいうか、「他人」という新しい関係を手に入れた。
次の巻以降、相模は基本的に出てこないで、八幡の中で完全に他人となった模様。


【9】「終わらなくても、いいと思うけど・・・」/由比ヶ浜結衣
   「・・・そう、かもな」/比企谷八幡

交換会用のプレゼント選び中の八幡と由比ヶ浜の2人の会話より。

お返しにお返し・・・と繰り返すと終わらないと諭す八幡に対して
終わらなくてもいいという由比ヶ浜

この巻の中で何度か互いに恥ずかしいのか黙り込んでしまうシーンがありますね、いいね。

「終わらない関係」なんて存在しないものだという信念が少し揺らいできている感じが
ちょっと垣間見えた気がする。

由比ヶ浜に対しては、少しずつ距離を詰めてきて、この関係がたんに欺瞞ではないと
思えるようになってきているんだと思います。


【10】「・・・あと、ついでにこれも持って帰ってくんねぇか」/比企谷八幡

クリスマスパーティーの帰り、雪ノ下と由比ヶ浜にプレゼントを渡す八幡。
雪ノ下にピンク、由比ヶ浜に青のシュシュ。

なんでこの色をそれぞれに贈ったかは、八幡しかわからないですね。

小町に「身に着けるものは重い」と釘を刺されたのに、あえてシュシュを選んだのは大きいですね。

これまでの八幡なら、自分が贈られて困ると思ったら贈らないし、
2人を大事な存在と認めて一歩踏み込んだ感じがすごく出ていて、いいね!です。

いつか2人がこのシュシュつけている挿絵が楽しみですね。



本編と大きく関係ないという位置づけの6.5巻ですが、
ボリューム的にも内容的にも本編でした。

アニメ13話では相模が一切登場しないので、全く別物と捉えてもいいかも。
この感じでアニメになることがないのは残念だなぁ。。。