やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10巻感想
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』
最新10巻を読みました。私なりに読んだ感想を。
今巻もすばらな内容ばかりなので、
個人的に気になる「10のキーフレーズ」でまとめてみます!
<以下、ネタバレです>
◆概要◆
新しい年を迎え、3学期。
進路(文系・理系)選択を迫られるなど、クラス替えを否応なしに意識させられる。
そんな中、「葉山と雪ノ下が付き合っている」という噂が学校中に流れていた。
今回の依頼人は三浦優美子。葉山の文理選択を知りたいというもの。
葉山と同じ選択をしてクラスが同じになる可能性を残したいという思いからのようだが…。
葉山の文理選択を探る中で、葉山の人間性や、雪ノ下姉妹と葉山の過去
などを少しずつ知っていくことになる八幡たち。
葉山はなかなか答えを明かしてはくれないが、戸塚らの協力もあり、
マラソン大会でその答えをつかむことに成功する。
今回は依頼の達成よりも、その過程の中で「葉山隼人」という人物の内面を伺い知る
ということがメインなお話。
◆雑感◆
まず印象的だったのは、これまでずっとこの物語の語り部は八幡だけだったのに、
そこが変わったのかな、ということ。
「手記」という形で2ページほどの独白があるのですが、おそらく八幡視点ではないようです。
手記②→葉山、手記③→陽乃さん、っぽい(明記はない)。
前半は奉仕部3人+小町の初詣や、八幡×由比ヶ浜の買い物デートとか、
読んでいて楽しいやりとりが多い感じがします。
プレゼントをしっかり使っちゃうゆきのん可愛い。
八幡も由比ヶ浜のこと結構意識してるんかなぁって描写も散見されますね。
ラスボスと噂される、ゆきのんママもついに登場。
今回はお披露目程度でしたが、由比ヶ浜への一言など、ちょっと気になる点も…。
今回のメインは葉山だったと思いますが、
陽乃さんの本性が少しずつ垣間見えてきたようにも思います。
特に最後の6ページは、陽乃の心という仄暗い深淵の入口に立たされたような気がします。
あと、表紙飾ってるからって暴れすぎです、陽乃さん。
平塚先生の「教職をとれ」「留学」あたりはフラグなのでしょうか??
どんより重たいという感じでもないお話でしたが、最後6ページでだいぶ印象がね…
続きが早く読みたいってなる終わり方だと思います。
保健室での八幡×雪ノ下が一番よかったかな。
あとは葉山の噂の終息のさせかた、葉山らしいし、好感もてるかもねー。
全体的に何か話が大きく進んだ、という印象はなく、
種まきというか、ほのめかし、って感じの巻でした。
さてさて、この10巻を「キーフレーズ」で振り返り。
【1】「雪乃のお友達だったのね、大人っぽくみえたものだから、つい」/雪ノ下母
雪ノ下ママが由比ヶ浜を見て言った一言。
由比ヶ浜を陽乃さんのお友達だと勘違いしたご様子。
ゆきのんの友達というのを見るのはおそらく初めてなんでしょう。
葉山も「陽乃さんの友達」で「雪乃の同級生」という認識だったりするんじゃないのかなぁ…。
「由比ヶ浜」と「大人っぽい」がどうにも結びつかないけど…
そもそも友達のお母さんの前で「ゆきのん」なんて言っちゃってるしwww
つまりは、雪ノ下ママから見て、ゆきのんはかなり幼いというか子ども、という認識なのでしょう。
ラスボスと目されていた雪ノ下ママ、今回だけではなかなか判断難しいですね…
【2】「そういう煩わしいの、やめてくれないか」
「…なんて相反すること言われたら今度はどうするんだ?」/葉山隼人
三浦の依頼を受け、葉山に直接文理選択を訪ねた八幡。
煩わしいのやめてくれ、というのはまぁ本心だと思いますが、
実に葉山らしい、あいまいで、成否のない返しですね。
葉山は多くの人に期待され、それに応え続けてきた。それが葉山隼人なのだと。
その期待は、時に相反するものもあったのでしょう。
それでもおそらく葉山は上手く振る舞い、どちらにも一定程度応える選択をしてきたのでしょう。
葉山は八幡のことを少し試したかったというか、聞いてみたかったのかなぁと。
そんな相反する願いを託されたら、君ならどうするのかと。
【3】「だから教師がしてやれるのは選択肢を増やすこと。…そして、選択肢を削ってやることだ」/平塚静
進路について話をする八幡と平塚先生。
いかにも教師っぽいことを言う平塚先生。本当いい教師なんだよなぁ…。
この会話の中では若干フラグっぽいワードも出てきてますね。
「留学」→雪乃?葉山ってパターンもあり得るかも
「教職」→八幡が教師なんて(笑)だけど、そーゆー大学行くのかもね
あと、「選択肢を削る」というのは今回のキーの一つでもあったようですね。
選択肢が多すぎて選べない葉山の選択肢を強引にでも削る、という方法だったし。
【4】「みんなの期待に応えてくれるのが、隼人くんだから」/海老名姫菜
葉山に文理選択を聞くこと・探ることは無意味だと八幡に告げる海老名さん。
葉山の文理選択はクラス替えに関わり、
それは海老名さんの希望する「今の関係を変えない」にも関わってくる。
でも、クラス替えで人間関係は瓦解しないと海老名さんは信じている。
―葉山は誰も傷付けない、期待に応えてくれるから。
葉山への周囲の期待が高いことがよくわかりますね。
スペック的に当たり前なんだろうけど、過剰に期待され過ぎてかわいそうまである。
にしても海老名さんって、修学旅行以来、何かわかっちゃってるキャラですね。
そしてそれを理解して応えるはちまん。似た者同士はここにもいますね。
【5】「いいえ、その…、知っておいても別に損はないでしょう?」/雪ノ下雪乃
葉山の文理選択を考察する上で、自分の過去を少し話し始める雪ノ下。
これまで自分のことや過去をあまり語ってこなかった雪ノ下が口を開く。
話そう、近づこうとしている、と由比ヶ浜が評していたのが具体化してきたかんじ。
だんだんと心を開いてきた、成長してるんだなと感じさせる一幕でした。
八幡は次回以降、色々と雪ノ下の心の中に踏み込んでいくかんじですね。
といっても、あんまり深い話じゃなかった気がする。
それとも、ここに書いてないだけで、もう少し話した内容があったのかな??
この会話の中で出てきた、「母は継続的な付き合いを望んでいる」というのは
花火大会の時に陽乃さんが言っていた「選ばれなかった雪乃ちゃん」に関係するのかな。
【6】「そっか。隼人も期待してたんだね」
「見つけてくれることを、かな」/雪ノ下陽乃
進路相談会の帰り道での陽乃さんと八幡の会話より。
八幡も「何を?」と問うていますが、葉山は何を期待しているのか?何を見つけてくれることを?
まぁ、それを受けての「第2の手記」なので答えの提示なのでしょう。
葉山は、周囲の期待に応え、誰も傷付けない選択をしなければならない、
そうし続けることが「葉山隼人」であるという認識を持っている。
でもそれは、葉山本人が望んでしているのとは少し違うし、
自分で選んでいるようで、選ばされている。
その間違いみたいなことを変える選択肢も持てていなくて、
それを誰かに見抜かれ、提示されたかったんじゃないかなと。
手記にもあるけど、陽乃さんは葉山の近くいるのに、そこを見抜いて示してくれないと
葉山は悲嘆にくれている。
でも、陽乃さんのこのセリフからすると、わかっているんですよね、きっと。
ただ、ちゃんと見てあげる気がない、ということでしょうか。
あと、隼人「も」期待している、「も」ということは他にも。ゆきのんのことかな??
【7】「あなたがそういうことを聞くのって初めてね」/雪ノ下雪乃
雪ノ下と保健室で二人っきり、なんともラブコメ的なシチュエーションでの会話より。
雪ノ下の進路選択を尋ねた八幡への一言。
前日、雪ノ下が自分のことを少し話してくれたから聞いたんだと思うけど、
ようやく八幡も雪ノ下に踏み込もうと小さな一歩を出せましたね。
これまでは雪ノ下に踏み込むことなどないと思っていた八幡ですが、
雪ノ下も心なしかうれしかったご様子でなにより。
読んでるこっちとしては、こうやって距離が縮まるのは、なんかうれしいですね。
扉越しに聞いていた由比ヶ浜の気持ちは別として。
【8】「やっぱり、彼女は変わったな…。もう陽乃さんの影は追っていないようにみえる」
「…けど、それだけのことでしかない」
「…気づいてないのか?」/葉山隼人
マラソン大会の打ち上げでの葉山と八幡の会話より。
葉山が思うには、雪ノ下は陽乃さんを理想として追いかけるのはもうやめたのだと。
「それだけのこと」というのは含みがあるけど…
たぶん、「成長した」ということではないよ、と言いたいのかなと。
八幡や読み手には、雪ノ下が徐々にではあるが心を開きつつあり、
自分より優れた完璧超人であり、越えられない壁であるお姉さんを追いかけることをやめた
というのは進歩であり成長であると捉えられるところ。
でも十何年近くで見てきた葉山は、それは違うのだと言う。
いい意味での成長でもないし、八幡たちに心を開いたわけでもないのだということだろうか。
もしくは、雪ノ下は芯があるように見えるが、実は自らの羅針盤を持ててはおらず、
これまで自分より優れた姉をやり方は違えど追従してきた。
それがこのところ、八幡にすり替わったのでは?と私は思っています。
陽乃さんの影を追うのやめただけで、憧れの対象が変わった、
それだけのことでしかない…なのかなぁって感じがします。知らんけど。
でもまぁ、次巻ではその意味するところがキーポイントになるようだけど…
【9】「それしか選びようがなかったものを選んでも、それを自分の選択とはいわないだろ」/葉山隼人
文理選択を誰にも教えなかった種明かしをする葉山。
今回はキーフレーズで葉山のセリフばっかりにしちゃったので、
もう同じようなこと書いているのでアレですが…。
結局葉山には、主体性が全然なくて、決めることも、決めたことを口にするのもできない。
そんな選択肢すら持てていないということのようです。
周囲の期待に応えるという選択肢しか選ぶことができず、自分の意思がない。
それでも葉山は葉山であるために、それをやめない。
自分の意思で、「自分では選ばないこと」を選択するのだと。
かっこいいんだか、かっこわるいんだか、よくわかんない。。。
あと、雪ノ下が言っていた「母は(葉山に)継続的な付き合いを望んでいる」が気になる。
きっと葉山は雪ノ下ママの期待のため、その付き合いが何を指すかは微妙だが、
それをすべく行動することになるのは、少し心配。。。
【10】「本物なんて、あるのかな…」/雪ノ下陽乃
手記が陽乃さんの独白だとして、それを含め6ページ。
陽乃さんの屈折した闇みたいのが垣間見えました。
陽乃さんがここで何を言いたかったのか、正直よくわかりませんでした。
整理すると…
①以前は「正義」や「信実」、「真実」、「本物」などに共感できたが、今は信じていない
②自分の本性を覆い隠した姿の自分が、ほかの人には真実の姿となった
③雪ノ下陽乃は雪ノ下雪乃が(部分的かは不明だが)気にくわない
④雪乃と八幡の関係性は信頼ではなく、もっと酷い何か
あたりでしょうか。
【8】で考察したことをベースにするならば…
雪ノ下も人に対する信頼をちゃんと有してはいない。
八幡や由比ヶ浜と依然に比べ仲良くはなったが、あまり踏み込んだ会話もない。
やはり今でも煢独なまま。
八幡たちに少し近づいてきた・心を開いてきたように見えるのは、信頼ではなく、
行動基準となる存在(=目標・憧れみたいな)の対象として。
ちょっと言い方は違うかもだけど、
模倣する作品や作者が存在しなければ、贋作者は何もできない。
どれだけ上手く描くスペックを有していても。
だからこそ、模倣できる人やモノを探し続ける。
これまで模倣していた対象に疑問を持てば、また別を探す…
雪ノ下は決して模倣してるわけじゃないんだけど、意味的にはこうかなと思っています。
越えられないから憧れて追いかけてきた。
でもいつか姉とは違うやり方・違う道で越えたいと思うようになっていた。
そこに八幡という違った形で秀でた人に感化され、憧れた。だから期待もした。
友情でも、恋でも、信頼でもなく。
…なんて陽乃さんには見えてるんじゃないかな、という私の勝手な憶測でした。
なんか全然違いそうで怖いんですけどね。。。
果たして、陽乃さんのいう「本物」とは?
次巻のキーはそのあたりでしょう。
◆その他、わかったこと&思ったこと◆
(1)凶+吉÷2=小吉×2
(2)雪ノ下の罵倒語彙ディクショナリーに「八幡」が追加
(3)葉山は「雪乃ちゃん」と呼ぶシーンがある
(4)八幡→雪ノ下へのプレゼントは、アイウェア
(5)葉山の好きな人、イニシャルY→大穴で大和?www
(6)キャッシュだけなら葉山家、総資産なら雪ノ下家
(7)戸部も海老名さんも陽乃さんも、みんな「信頼」というワードを否定した
最後の方は、かなり私の勝手な憶測をダラダラ書いてしまいました。
ただでさえミスリードの多い書き方をされているので、自信ないです。
でも、色々な解釈が投稿されるので楽しみですけどね。
今回は種まきというか、ほのめかす感じが多かったですが、
いよいよ雪ノ下雪乃・陽乃の心の中にスポットが当たりそうです。
「本物」とは一体何か?どうやって手に入れるか?次回で大きく動きそうですね。
個人的には、みんなが意図してか「信頼」という言葉には首肯しなかった。
「本物」と「信頼」は紙一重な存在菜気がしてなりません。
一色いろはは、今後も活躍しそうなポジションですね。
もう奉仕部の一員でいいんじゃない?くらいの存在感。
まだ残っている伏線・フラグ回収も気になるところ。ハニトーお返しデートが一番気になるけど、
三角関係みたいなラブコメ展開は期待しない方がいいのかなぁ…。
11巻が気になるけど、その前にアニメ2期がありそうなので、気長に待つしかないですね。