やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。7巻感想
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』
今一度原作をきちんと読み直そう企画。
7巻を改めて読んだ感想を。
今巻もすばらな内容ばかりなので、
個人的に気になる「10のキーフレーズ」でまとめてみます!
<以下、ネタバレです>
◆概要◆
今回の奉仕部への依頼人は、葉山グループのムードメーカ、戸部。
「(戸部が)海老名さんに告白するのでサポートしてほしい」という依頼。
しかし、海老名さんからはいい返事をもらえないことが濃厚で、八幡も雪ノ下も諦めムード。
そんな中、修学旅行で一緒に行動し、仲を深めて少しでも告白の成功率を上げる作戦に。
だが、海老名さんや葉山は、今の友達関係・環境を壊したくないという思いを抱いていた。
最終的には戸部の告白を寸前で回避し、「現状を壊さず、誰も傷付かない」ことを選択するが、
その八幡の自己犠牲的ともいえる手段に、雪ノ下・由比ヶ浜から痛烈な批判を浴びる・・・
◆雑感◆
前半は八幡×雪ノ下の掛け合いも多く、テンポよく読めるけど
修学旅行最後の夜(8・9章)はすごく重苦しい!あと味すっごく悪い!!という感じでした。
(それがこの作品の良さでもあるのだが)
8巻も「大切なものを守ろうとした結果、守ったつもりの大切なものを失ってしまう苦悩」を描いている感じですが、
8巻は八幡自身の、7巻では八幡が属さない葉山たちのそれを対比している…気もする。
とにもかくにも最後15ページくらいの密度というか破壊力。
雪ノ下・由比ヶ浜のあの冷たい視線と突き放した感じが、とにかく苦しい。
八幡×雪ノ下のラーメン前後の感じ、すごく好き。でも個人的にはMVPは三浦かな。
さてさて、この7巻を「キーフレーズ」で振り返り。
【1】「今まで通り、仲良くやりたいもん」/海老名姫菜
戸部の依頼とは別に、海老名さんも奉仕部に依頼を持ち込む。
不自然なグループ分けなど、葉山・戸部・大岡・大和たちの関係の変化を危惧する海老名さん。
戸部の気持ちや奉仕部の計画をなんとなく勘付いていて、牽制の意味で言っているはず。
つまるところ、この8巻の答えの1つは既に提示されていたんですね。
これをどこまで受け止めていたか、というだけのこと(八幡以外は依頼と受け止めていない)。
変わることへの嫌悪も、こう素直に言われると、決して悪いことではなよなと思える。
【2】「他人事のように言うけれど、そもそもあなたが文化祭の時に…」/雪ノ下雪乃
修学旅行1日目の夜、部屋を抜け出しお土産コーナーにいた雪ノ下と八幡の会話より。
クラスメイトの話題の矛先が雪ノ下に向けられた。どうしてあーゆー話が好きなのかしらと雪ノ下。
雪ノ下はどんな話かそれ以上は言及しなかったけど、雪ノ下×八幡の仲のことかな?
ラーメン屋の帰りにも、「一緒にいるのを見られると…」とか言っているし。
そーいえば、10巻のあらすじに「新学期にざわめく教室にはある人物の噂が流れていた」
とあるんだけど、このことなのかもなぁ…と思ってみたり。。。
【3】「ちゃんと見ているから、いくらでもまちがえたまえ」/平塚静
修学旅行1日目の夜、ラーメン屋に八幡&雪ノ下を連れ出した平塚先生の言葉。
修学旅行で宿抜け出してラーメン屋行く、それを見られ口止め料と称して生徒を連れ出す教師
ってどーなのよ?は置いといて…
叱られること=悪いことではない、と諭す平塚先生。
毎回平塚先生の言葉は、その巻のキーを示唆していると思うんだけど、今回のは少し意図が読みにくい。
恐らくこの短い会話は、「問題の解決」と「問題の解消」の違い、失敗した後に正しい道へ戻るための先生の援助や示唆、とかを言いたいのかなと。
「失敗してもいいからやってみろ、ちゃんと正しく導いてやるから」と後押しをくれるって、いい教師ですね。
【4】「うまくいかないもんだね」/由比ヶ浜結衣
修学旅行期間中、色々頑張る由比ヶ浜。
席順やタクシーの割り振り、胎内めぐり、お化け屋敷…とにかく頑張る由比ヶ浜。
そもそも海老名さんの眼中に戸部がいないので…みたいなところはあるけれど、
由比ヶ浜なりに色々思案して頑張っている様子は伝わってきます。
意図してか無意識かはわかりませんが、確実に八幡×由比ヶ浜の距離が縮むイベントばかりに。
そっちも頑張っているのかな?
まぁ由比ヶ浜はそんな打算なイメージではあってほしくないので、違うことを願うばかりですが。
【5】「あんま姫菜にちょっかい出すの、やめてくれる?」/三浦優美子
修学旅2日目の夜、ホテルを抜け出し立ち寄ったコンビニで遭遇した八幡と三浦の会話。
八幡らの妙な行動に釘をさす獄炎の女王:三浦。
三浦にとっては、今が楽しい。今の海老名さんがそうでなくなること、今を失うことは嫌なのだと。
海老名さんの普段見せない一面、空気を読まずに合わせる危うさ、彼女への評価…
章のタイトル通り、三浦が周囲をちゃんと見ている、思っていると感じさせる一幕でした。
八幡を直視せず、雑誌をめくりながら友達を思って話すこのシーン、三浦っぽくていい。
【6】「君だけには頼りたくなかったのにな…」/葉山隼人
修学旅行3日目の夜、戸部の告白直前の八幡と葉山の会話。
この旅行中、葉山は一連の画策に非協力的な態度(表面上はそこまででもないか)だった。
葉山も三浦と同じく、今が気に入っていて、みんなでいる「今」を壊したくない、変えたくないのだと。
大切なものが多すぎて、どの道を選ぼうとも(戸部を応援するもしないも)、大切なものを失てしまう。
だからこそ八幡にこの件を託したのだ。
葉山の印象が大きく変わった一幕でした。なんかこう、「いい人」「みんな大事」みたいな一般的な正義が
八幡みたいな捻くれた色眼鏡を通さなくても、必ずしも正しくないと思わされる。
対比として葉山は大事な存在だが、大事な時にダメな人って印象が強くなりすぎた…。
【7】「うまく説明ができなくて、もどかしいのだけれど…。あなたのそのやり方、とても嫌い」/雪ノ下雪乃
いざ戸部の時。
戸部の代わりに告白して振られ、葉山グループの誰もが傷つかない世界を演出した八幡。
そんな八幡を、冷たく軽蔑するような視線で糾弾する雪ノ下。
挿絵のインパクトが相当強い。もう全てを失うくらいの強烈な冷たい視線。
方法論としては褒められるべきではないから、責められて当然だとは思う。
ポイントは、いつも理路整然としてきた雪ノ下が「うまく説明できないが嫌い」と言った点。
なぜ雪ノ下はこの八幡の行動をこうも否定したか。
「解決ではなく、解消(むしろ現状維持)のためにとった行動だから」と私には読めた。
告白で崩れる彼らの今の関係を守るため、またも自己犠牲でその場を収束をみた八幡。
彼らの意思のためとはいえ、八幡もまた「現状維持」を選択したのだ。
彼らしくない「逃げ」ともいえる行動に、期待や憧れを内心抱いていた八幡に失望したのかな…
嘘をつく雪ノ下へ八幡が失望したのと対比的に。
あと、5%くらいは嫉妬的なのもあるのかな。。。
【8】「人の気持ち、もっと考えてよ…」
「…なんで、いろんなことがわかるのに、それがわかんないの?」/由比ヶ浜結衣
八幡の偽告白という自己犠牲的な方法に、当然、由比ヶ浜も怒っている。
基本的には、純粋に方法論として評価できないことに加え、
偽告白という演出とはいえ、目の前で好きな男子が他の女子に告白するのは見たくないよな。
感情にまっすぐで、そこが八幡と対比的な由比ヶ浜らしい言葉に思える。
深読みしすぎれば、由比ヶ浜の好意にある程度気付いている八幡の牽制とも読めなくないかも。
特にこの修学旅行中、何かと距離の近かった由比ヶ浜と心的に距離をとる意図もあった…?
【9】「私、ヒキタニくんとならうまく付き合えるかもね」/海老名姫菜
修学旅行最終日の朝、八幡だけが受け取った依頼への感謝を伝える海老名さん。
八幡にとって「今回の俺の依頼人」は、戸部ではなく海老名さんでした。
今の友達関係やその空間が好きだで、なくすのは惜しいと、
でもそんな自分が本当は嫌いなのだと、海老名さんは言う。
結局、八幡も海老名さんも似た者同士というか、近しいところがあるんですね。
八幡も、葉山や三浦、海老名さんの願いを聞くという形で、うわべを取り繕い、
大事だからこそ失わないようにすることを選んだ。
海老名さんも、八幡ならわかって行動してくれると思えたからこそ、依頼したんだよなぁ。
【10】「けれど、一番の大嘘つきは俺だった」/比企谷八幡
8巻最後の一文、八幡のモノーグより。
海老名さんの依頼に応えるという形ではあるが、うわべを取り繕う、現状維持を選択した八幡。
行動自体は褒められたものじゃないけど、リスクを計算しその場での最善手ではあったのだと思う。
でもこの行動(=偽告白の件)を決意したのは、葉山との会話で、葉山に共感してしまったから。
そして海老名さんの「今を壊したくない」という気持ちに、自分の気持ちを重ねているのでしょうか。
八幡にも、雪ノ下や由比ヶ浜、そして奉仕部という関係・空間、大切なものができてしまった。
いずれこれが壊れることを知っているのに、このぬるま湯に浸りたいと思ってしまったから…
今の関係を失いたくないと一番願っているのは自分だと気付いてしまったから…
今までの八幡の軸が大きく揺らいだ巻だったと思います。
けどまぁ、このどんよりした感じで、この巻が終わるとは、モヤモヤ感がたまらない。。。
その他、わかったこと&思ったこと
(1)「さがみんかわいそう」ブームの後は「ヒキタニ君をネタにしよう」ブーム
(2)とにかく戸部はポジティヴ・シンキンガー
(3)新幹線・タクシーなど席順に気を遣いすぎ
(4)由比ヶ浜は川﨑をサキと呼んだりする
(5)「深い」という感想の浅さは異常
とっても重かったけど、先が気になる今回のお話。
軸が大きく揺らいだ八幡、そして奉仕部の今後は・・・?
ここで大きな失敗をしたからこそ、8・9巻での苦悩も成長もあったのだと思います。
私は北海道に住んでいるので、最新10巻はまだ未発売。明日は読めるはず…楽しみすぎる